Kurumi Journal
Magazine
ひかりの種|Feature Magazine Vol.05

Illustration & Text : Kurumi Atelier
『ひかりの種』(Feature Magazine Vol.05)
朝の光は、まだ冷たさを少し残している。
窓辺の空気が静かに揺れ、薄く透けるような光が机の上に落ちている。
その気配の中で、小さな芽がゆっくりと立ち上がっている。
昨日までは土の奥で沈黙していたものが、
今朝になって、ひと呼吸ぶんだけ世界へ近づいたのだ。
この変化は声にならず、色にもならず、ただそこに「在る」。
日々の暮らしにも、こうした小さな動きが潜んでいる。
確かな形をもたず、目で見えないまま過ぎていく気配。
それらが折り重なり、気づけば静かな朝の光のように心を照らしている。
芽は今日も、ごくわずかに伸びていく。
急がず、誇らず、ただ目の前の光に向かって伸びるだけである。
その姿に、私たちは静かに慰められるのかもしれない。
未来とは、大きな決意から始まるものではなく、
こうした微かな「ひかりの種」から芽吹くのだと思う。
今日もまた、新しい気配が世界のどこかで立ち上がっている。
— 企画・制作:Kurumi Atelier




