Kurumi Journal
Magazine
冬の手紙|Feature Magazine Vol.04

Illustration & Text : Kurumi Atelier
『冬の手紙』(Feature Magazine Vol.04)
窓の外に、やわらかな冬の光が滲んでいる。
その明るさは鋭さを持たず、ただ静かに机の上へ降り積もる。
湯気の立つカップをそっと手に寄せると、
かすかな温みが、指先の冷えをゆっくりほどいていく。
書きかけの便箋には、まだ言葉が一行しかない。
季節が移りゆくたびに会いたくなる人の顔を思い浮かべると、
伝えたいことは山ほどあるはずなのに、
どれも文字にする前に、胸の奥でふわりと形を変えてしまう。
冬という季節は、沈黙の中に気配が宿る。
遠くの道を走る車の音も、足元の床の軋みも、
すべてが薄い膜に包まれたように柔らかい。
そんな静けさのなかで手紙を書くと、
言葉は少しずつ、呼吸のリズムに寄り添いはじめる。
湯気が細く揺れ、窓辺の白さがわずかに明るむ。
今日こそは、と決めた言葉を便箋にそっと置く。
それは、いまの自分が冬に託した、やさしい一通である。
— 企画・制作:Kurumi Atelier




